【自己破産で生命保険の解約が必要・不要なケース】解約したくないときの方法も解説
自己破産でお悩みの方は必見。この記事では自己破産と生命保険で、解約が必要なケースと不要なケースを詳しく解説。実は自己破産しても、条件によっては生命保険を継続できる方法があります。この記事を読めば、自己破産時の生命保険の取扱いが分かります。
自己破産の手続きを検討中の方は「現在契約している生命保険を手放さなければならないのか」と思われていませんか?
実際のところ、破産申立てをしたからといって、保険契約を全て解約する必要のないケースが多くあります。特に解約時の返還金が20万円以下となる商品や、満期返戻金のない掛け捨てタイプの保険であれば、継続することが可能な場合が少なくありません。
当法律事務所は数多くの債務問題に対応してきた実績があり、破産手続きの支援を迅速に行ってまいりました。この記事では、破産手続き中の保険契約について、解約が求められる場合と維持できる状況を分かりやすく説明していきます。この記事をお読みいただくことで、ご自身のケースに最も適切な選択肢が見えてくるでしょう。
目次
自己破産すると生命保険の解約が必要なケース
自己破産の申立てにより保険契約終了が求められるのは、下記のような状況です。
①解約返戻金の合計額が20万円を上回る場合
②生命保険に加えて他の損害保険契約等がある場合
以下、それぞれの内容を詳細に説明します。
①解約返戻金の合計額が20万円を上回る場合
破産申立手続きにおいて、保険の解約返還金総額が20万円を超過する場合、その保険は処分対象財産です。
破産法の規定では、債務者の生活再建に必要な基本的な財産を「自由財産」として保持することを認めています。
破産手続きにおいて、下記のものは自由財産と認められています。
・破産手続き開始以降に獲得した財産(新得財産)
・現金99万円まで
・生活必需品など差押禁止財産
・価値が20万円以下の財産
破産手続きでは、基本的に破産者の所有物は換金され債権者へ分配されます。
しかしながら、自己破産制度の根本的な目的は破産者の経済的な回復です。
再建できるよう、法律では破産後も自由に所持できる資産を設定しているのです。
長期契約の保険や高額な掛金設定の保険商品は、解約返還金が20万円の枠を超えることが多く、破産申立時に解約になる確率が高まります。
ただし、全ての保険商品に解約返還金が生じるわけではありません。
掛け捨て方式の保険や国民年金・健康保険等の公的保障制度には解約返還金が発生しないため、破産後も契約継続が可能です。
②生命保険に加えて他の損害保険契約などがある場合
破産手続きでは、各保険を個別評価せず、全契約の解約返還金合計額で判定します。
つまり、生命保険単体でなく他の保険契約も含めた総計が20万円を超えると、生命保険契約が解約対象になる可能性が生じます。
解約返還金が発生する可能性のある保険としては、以下のようなものです。
・生命保険契約
・養老保険契約
・傷害保険契約
・自動車関連保険契約
・住宅火災保険契約
・地震対策保険契約
・賠償責任保険契約
これらの保険に複数加入している場合、個別の返還金額は少なくても、合算すると20万円基準を上回ることがあります。
現時点での解約返還金額については、契約中の保険会社の顧客窓口へ確認しましょう。
破産申立を検討している方は、事前に各保険の契約状況と返還金額を正確に把握しておくことが重要です。
自己破産しても生命保険の解約が不要なケース
自己破産しても生命保険の解約が不要なケース として、次のものが代表的です。
①解約返戻金が20万円以下
②掛け捨て型の生命保険契約
③貯蓄型生命保険を契約後して間がない
以下で詳しく見ていきましょう。
①解約返戻金が20万円以下
上述の通り自己破産の手続きにおいて、生活再建に必要な財産は自由財産として保護されます。従って、解約返戻金が20万円以下の生命保険契約は、通常は解約の対象外です。
解約返戻金の金額は、保険の種類や契約期間によって大きく変動します。掛け捨て型の保険や契約期間が短い場合は、20万円を下回ることが多いでしょう。
一方、貯蓄性の高い保険や長期契約の場合は、20万円を超える可能性が高くなります。
②掛け捨て型の生命保険契約
掛け捨て型の生命保険は、自己破産手続きにおいて継続利用できる可能性が高い保険契約です。
この保険契約が解約対象から除外される主な理由は、解約返戻金がないか、あってもかなり少額なためです。
掛け捨て型保険の特徴として、支払った保険料は保障の対価として消費され、貯蓄性がほとんどないことが挙げられます。
契約期間中に解約しても返金される金額はほぼなく、多くの場合は20万円の基準額を下回ります。
代表的な掛け捨て型保険は、定期保険や収入保障保険、医療保険、がん保険などです。
これらは万一の事態に対する「備え」を目的としており、現金価値を持たない性質から、自己破産時も継続できるケースがほとんどです。
ただし、特約の内容によっては解約返戻金が発生する場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
③貯蓄型生命保険を契約して間がない
貯蓄型生命保険に加入したばかりの方は、自己破産時に解約を迫られる可能性が低くなります。契約初期段階では解約返戻金が十分に蓄積されていないためです。
貯蓄型生命保険の特徴として、契約期間が長くなるほど解約返戻金が増加する傾向があります。ただし、加入直後は支払保険料の大部分が事務手数料や保険会社の運営費に充てられるため、解約返戻金は少額にとどまります。
そのため、契約後間もない貯蓄型生命保険の解約返戻金が20万円を下回る場合には、通常は解約手続きが不要です。
ただし、具体的な解約返戻金の額は保険商品や契約内容によって大きく異なります。自己破産を検討している場合は、必ず加入している保険会社に現在の解約返戻金を確認しましょう。
自己破産で生命保険の解約が必要になる理由
自己破産において生命保険の解約が必要となる主な理由は、債権者へ公平に分配するためです。
自己破産では借金が免除される代わりに、破産者の財産は換金され債権者に分配されます。
生命保険の解約返戻金が20万円を超える場合、「売却・換価したとき20万円を超える財産」とみなされ、処分の対象です。
具体的には以下の過程をたどります。
・解約返戻金が20万円超の場合、管財手続きの対象
・破産管財人が財産を管理するため、保険を解約し返戻金を現金化
・現金化された返戻金は債権者への配当原資
自己破産で処分対象となる主な財産は以下の通りです。
・不動産(家や土地など)
・99万円を超える現金
・換価時に20万円超となる財産(生命保険の解約返戻金を含む)
生命保険の解約は、債権者へ公平に分配するために必要な手続きです。
自己破産で生命保険の解約をしたくないときの方法
自己破産で生命保険の解約をしたくないときの主な方法として、次のものが挙げられます。
①裁判所に自由財産の拡張を申請し認めてもらう
②保険法の介入権制度を利用する
③自己破産以外の債務整理|個人再生を検討する
④自己破産以外の債務整理|任意整理を検討する
以下で順番に紹介します。
①裁判所に自由財産の拡張を申請し認めてもらう
自由財産とは、自己破産しても手元に残せる財産のことです。生命保険を解約せずに継続したい場合、この制度を活用する方法があります。
自己破産では通常、99万円以下の現金、時価20万円以下の財産、日常生活に必要な家財道具のみが自由財産として認められます。
解約返戻金が20万円を超える保険でも、裁判所に「自由財産の拡張」を申請して認められれば継続できるのがポイントです。
この制度があるのは、特別な事情がある場合、債権者への分配よりも破産者の生活再建を優先させる必要があるからです。
健康状態や年齢から生命保険解約後に再加入が困難な場合や、現在治療中で保険金に日常生活の費用を依存している場合などが該当します。
破産法第34条第4号の規定では「自由財産の拡張」制度が明文化されており、生活に支障が生じる可能性がある場合は、裁判所に申立てることで保険契約の継続が認められる道が開かれています。
②保険法の介入権制度を利用する
自己破産時に生命保険契約を継続する方法として、介入権制度を活用できます。
介入権制度は、本来なら破産手続きで解約・換価されてしまう生命保険を、保険金受取人である親族が解約返戻金相当額を支払うことで契約を存続させる仕組みです。
ただし、この制度を利用するには親族が解約返戻金相当額を用意できることが前提です。
資金面のハードルはあるものの、大切な保障を失わずに済むという点では、意義のある制度といえます。
③自己破産以外の債務整理|個人再生を検討する
生命保険を解約せずに債務問題を解決したい方には、個人再生という選択肢があります。個人再生とは、借金総額を5分の1から10分の1程度に圧縮し、3~5年の期間で計画的に返済していく債務整理の方法です。
個人再生の最大の特徴は、一定の条件を満たせば生命保険契約を維持したまま債務整理ができる点です。
また、住宅ローンを返済中の家など、重要な財産を手元に残せることでも知られています。
ただし、この手続きを利用するには安定した収入があることを証明しなければなりません。
注意すべき点として、個人再生では本人の財産価値に応じた返済計画を立てるため、生命保険の解約返戻金が高額であるほど返済総額も増加することです。
返済能力を超える場合には、生命保険を解約せざるを得ないケースもあるでしょう。
④自己破産以外の債務整理|任意整理を検討する
生命保険を維持したまま借金問題を解決する方法として、任意整理という選択肢があります。任意整理とは、債権者と直接交渉して将来の利息をカットし、元金を3~5年かけて分割返済する債務整理の手法です。
この方法の最大のメリットは、裁判所を介さない手続きであるため、日常生活への影響が比較的小さい点にあります。自己破産や個人再生と比較すると債務減額効果は限定的ですが、重要なのは解約返戻金を回収する目的で、保険契約が強制的に解約されないことです。
生命保険による保障を継続したい方にとって、検討すべき選択肢といえるでしょう。
自己破産時に生命保険の解約をしたくないため契約を隠してはいけない
生命保険の解約を避けたいからといって、契約の存在を隠すことは厳に慎むべきです。「財産隠し」と判断され、自己破産手続きそのものが認められなくなる可能性があるためです。
自己破産の手続きは、裁判所によって厳格な審査が行われます。その過程で「意図的に財産目録から保険契約を省く」といった行為は、悪質な財産隠しとみなされ、免責不許可事由に該当することがあります。
以下は、財産隠しに該当する行為の具体例です。
どうしても生命保険を継続したい場合は、契約を隠さずに弁護士などの専門家に相談しましょう。
自己破産と生命保険の解約に関するよくある質問
ここでは、破産申立と保険契約に関して頻繁に寄せられる3つの疑問点を紹介します。
①破産手続きを開始したら生命保険はどのような扱いになるのか?
②破産申立てにおいて保険の解約返還金はどう処理されるのか?
③保険の解約返還金が20万円の枠内である場合はどうなるのか?
以下、各質問への回答を詳しく見ていきましょう。
①破産手続きを開始したら生命保険はどのような扱いになるのか?
破産申立てを行うと、加入中の保険契約は破産者の資産として扱われ、基本的には管財人により換金処分されます。この手続きで得られた返還金は、債権者への支払いに利用されます。
ただし、全ての保険が必ず解約対象になるわけではありません。返還金が発生しない掛け捨て方式の保険や、返還額が20万円を超えない契約は「自由財産」として維持できる場合があります。
一方、返還金額が20万円を上回る場合や、数種類の保険を合わせた総額が基準額を超過する場合は、処分対象財産となり解約される可能性が高まります。
なお、配偶者名義で結ばれている保険契約は配偶者の所有物とみなされるため、破産手続きの処分対象外です。
②破産申立てにおいて保険の解約返還金はどう処理されるのか?
破産手続きにおいて、保険解約時の返金も債務者の財産として認識されます。
保険契約解約時に受領する返還金は、契約者が納付してきた保険料の一部が戻ってくるものであるため、契約者自身の財産です。
申立て時点で積立型保険に加入していると、その返還金は債権者への分配資金として回収の対象です。
管財人が指名される場合、その判断により契約解除手続きが実施され、返金は債権者への弁済に活用されます。
ただし、全ての保険が必ず解約処理されるわけではなく、返金額や保険種別により取扱いが異なってきます。
③保険の解約返還金が20万円の枠内である場合はどうなるのか?
保険契約の返還金総額が20万円に満たない場合、破産申請をしても解約する必要性はありません。
これは「本来的自由財産」として法的保護の対象だからです。破産手続きを行っても、管財人の管理下に置かれず、破産申立者が継続して保持できる資産として認められています。
複数の保険契約がある場合、返還金は合計して考慮される点に注意が必要です。
破産申請時には、契約中の全保険の返還金額を正確に把握し、合計で20万円内に収まるかを確認することが重要です。
疑問点がある場合は、債務整理や破産手続きに詳しい弁護士への相談をお勧めします。
まとめ|自己破産で生命保険の解約に悩んだら弁護士に相談を
破産申立により保険契約の終了が求められるのは、解約時の返還金が20万円の制限を超過する場合、または複数の保険(生命保険と他の損害保険等)に加入しており、その返還金合計額が20万円を上回る状況です。
一方、次のような条件では破産手続きを行っても保険契約を維持できる可能性があります。
・解約時の返還額が20万円の範囲内
・満期返戻金のない掛け捨て方式の保険
・貯蓄性がある生命保険でも契約期間が短い場合
自己破産による生命保険の解約で迷われている方や保険契約の継続を希望される方は、初回無料相談を実施している当法律事務所までお気軽にご連絡ください。債務問題の解決実績が豊富な専門家がサポートいたします。
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