破産したら経営者はどうなる?押さえておくべきポイントと基礎知識を徹底解説
2024年度の全国企業倒産件数は1万144件と11年ぶりに1万件を上回ったことが分かりました。これほど、多くの企業が倒産しているのに、多くの方は破産したらどうなるのかを知りません。しかし、これは非常に危険な状態です。なぜなら、破産しても人生は続いていくからです。
今回は、破産したら経営者はどうなるのかを詳しく解説します。本記事を読むと、破産したら経営者がどうなるのかが分かるだけでなく、押さえておくべきポイントと基礎知識が分かるので、万が一に備えた知識を身につけておきたい方や経営が苦しくなっている経営者の方は、ぜひご一読ください。
目次
会社が破産したときに押さえておくべきポイント
会社の破産には、さまざまな原因が存在します。資金ショートや人手不足、後継者問題など多種多様です。しかし、会社の破産時に押さえておかなければいけないポイントには違いがありません。ここでは、会社が破産したときに押さえておくべき3つのポイントを詳しく解説します。
連帯保証の有無
会社の破産時に最も重要になるのが連帯保証の有無です。基本的に中小企業は、金融機関から資金を借り入れる際に経営者が連帯保証します。
連帯保証とは主たる債務者と連帯して債務を負担することなので、債務者が債務を履行できない場合は、主たる債務者に代わり債務を履行する義務を負うことになるのです。
これは、法律によって自然人と同様の権利と義務を持つ「法人」の連帯保証になった場合でも変わりません。
経営者が会社の連帯保証人になると、会社が債務を履行できない場合、履行義務を負うことになるのです。そして、会社が破産すると連帯保証債務は基本的に一括返済が求められます。
しかし、会社が破産するときは経営者も資金的に苦しい状況になっていることが多いため、返済が難しいのが現実です。このような場合は、会社の破産だけでなく経営者も対応が必要になります。まずは、連帯保証の有無を確認したうえで負債状況を正確に把握することが大切になります。
会社からの借入金を確認する
会社経営において、経営者が会社からお金を借り入れることは珍しくありません。そのため、会社が破産するときは、会社からの借入金を把握しておく必要があります。
中には、どうせ破産するのだから経営者への貸付金を気にしなくてもいいのではないかと考える方もいるかもしれません。しかし、経営者が借り入れたお金は会社が破産しても返済義務が残るので注意が必要です。
会社が破産して債務整理を行う場合、会社に残された資産は債務者で分けることになります。この時、会社にとっては経営者への貸付金は資産に該当するため、必ず返済しなければいけません。
ただし、先程も説明した通り会社が破産するときは、基本的に経営者自身も経済的な苦境に立たされているケースが多くなります。このような場合は、経営者自身が自己破産することで免責を受けることが可能です。
そういう意味でも、経営者の今後に大きく関わってくるため、会社からの借入金は正確に把握しておきましょう。
破産しても支払う必要がある費用
会社が破産すると、税金や社会保険の支払いに関して経営者が責任を負う必要は原則としてありません。なぜなら、破産すると債務者がいなくなるからです。そのため、税金や社会保険料といった債権も消滅します。
しかし、以下のケースに当てはまる場合は、破産後も支払い義務が残る可能性があるので注意しなければいけません。
・過去に納税証明書を提出しているケース
・第二次納税義務が発生しているケース
破産する場合は上記のケースに該当しないのかを確認しておくことが重要です。
なお、ここで説明しているのは、あくまで法人の場合です。当然ですが、経営者個人の税金は別問題なので、その点は忘れないでください。中には、経営者が自己破産すれば税金なども免責されると考える方もいらっしゃいますが、経営者が自己破産しても税金などは免責の対象にはなりません。この点は覚えておきましょう。
また、会社の破産や自己破産には費用がかかるので、その点も考慮したうえでの対応が必要です。
経営者が自己破産した場合の影響
会社の借り入れに対して経営者が連帯保証している場合は、経営者が債務履行の義務を負うことになります。このとき、経営者が自己破産すれば免責されるので、会社の破産と同時に自己破産を選択する経営者は少なくありません。
では、自己破産すればどのような影響があるのでしょうか?ここからは、経営者が自己破産した場合の影響について詳しく見ていきましょう。
個人財産の没収
会社の破産と同時に経営者も自己破産を選択すると、個人の財産の多くを失うことになります。この時、対象となるのは現預金だけではありません。換金できる財産や不動産、自動車に貴金属なども対象になります。個人資産は処分・換金された後に弁済に充てられることになるのです。
どれくらいの物が残るのかは、ケースバイケースの部分があるのですが、基本的にはある程度の財産を失うことは覚悟しておく必要があります。ただし、すべてを失うわけではありません。あくまで、自己破産は生活を再建することを目的とした制度です。そのため、生活していくために必要なものが没収されることありません。具体的には、下記のものを残すことができます。
・99万円以下の現預金
・合計20万円以下の評価額となる財産
上記に該当するものは残すことができます。先程も解説したように、自己破産は生活を再建することを目的とした制度です。すべてを失うわけではないことを覚えておきましょう。
制限されること
自己破産をすると、いくつか制限されることがあります。中でも覚えておかなければいけないことが、職業と資格に関する制限です。
ここからは、自己破産により制限を受ける職業と資格について見ていきましょう。
自己破産により制限を受ける資格
・弁護士、税理士、司法書士、公認会計士などの士業
・宅地建物取引士の登録
・証券会社などの外務員の登録
・保険外交員の登録
・警備員
破産手続き中は上記の資格を一時的に失うことになります。ただし、基本的には免責決定により資格は復活するので、それほど心配する必要はありません。
自己破産により制限を受ける職業
・銀行の取締役
・信用協同組合の役員
・金融関連の職務
上記に該当する場合は、一時的に退任する必要があります。ただし、破産開始決定が退任理由になるので、退任後すぐに再任されることも珍しくありません。
どちらの場合も、一時的にという意味合いがあるのですが、制限を受けることに変わりはないので覚えておきましょう。
クレジットカードの発行とローンについて
自己破産した場合、信用情報機関に5年から7年ほど事故情報として保存されます。いわゆるブラックリストに載るという状態です。そのため、最長で7年間はクレジットカードの新規作成ができません。このように聞くと、これまで使用していたクレジットカードは使用できると考えるかもしれませんが、自己破産の手続きが開始されると、カード会社への受任通知が送られ、この時点で強制解約となりカードの返還を求められるので、それまで使用していたクレジットカードを使うこともできなくなります。
また、信用情報から事故情報が削除されても、すぐにクレジットカードを作成できるというわけではありません。カードの新規作成は各事業者の判断によるものなので、その点は覚えておきましょう。
なお、自己破産しても基本的に家族名義のクレジットカードは影響を受けることがありません。そのため、家族カードの利用は可能です。他にも、デビットカードやプリペイドカードの作成も影響を受けることがないので、キャッシュレス決済の手段を失うことはありません。
また、信用情報に事故情報が保存されることで、ローンの審査も通らなくなります。そのため、住宅ローンや自動車ローンを組むことが難しくなることも覚えておきましょう。
家族への影響
経営者が自己破産しても、家族が法的な責任を追及されたり、金銭的な負担を強いられたりすることはありません。ただし、これは家族が連帯保証人になっていないことが条件です。
家族が連帯保証人になっている場合は、当然、家族が債務履行の義務を負うことになります。一方、家族が連帯保証人になっていない場合は、家族への影響はありません。ただし、気を付けなければいけないことがあります。それが、家族間における金銭の動きです。
破産前の経営者の中には、少しでも金銭を残すために家族名義の口座に会社の資産を映したり、理由のない支払いを行ったりする方も少なくありません。しかし、このような事実が発覚すると会社の破産後に破産管財人から否認権を行使されるだけでなく、家族に賠償請求がされることがあります。なぜなら、これらの行為は財産隠しとみなされる可能性があるからです。こういったリスクをなくすためにも、破産前の金銭の移動は慎重に行うようにしてください。
自己破産は生活を再建することを目的とした制度です。言い方を変えれば、新たなスタートを切るために用意された制度です。だからこそ、破産の申し立て時には、破産管財人に包み隠さずすべてを伝えるようにしましょう。
破産時の注意点
会社を破産するときには、いくつかの注意点があります。中でも重要なのが債権者平等を害する行為をしないことです。
会社経営をしてきた中で、経営者はさまざまな人との出会いを経験します。中には、恩義を感じている相手もいるかもしれません。そのような方に、迷惑をかけたくないと考ええるのは自然なことです。
このような理由により、特定の一部債権者に対して優先的に返済したいと考えることもあるでしょう。しかし、これらの行為が発覚すると破産管財人に否認されるリスクや破産手続きが長期化するリスクが高まります。
しかも、破産手続きに返済相手を巻き込んでしまう可能性もあるので注意しなければいけません。さらに、財産隠しと認定されれば破産法上の刑罰の対象となる危険性もあるので、冷静な判断が求められます。
「少しくらいなら」という気持ちを持つことで、思いもよらないリスクを抱えることになることは忘れないでください。法律によって再起を目指すからこそ、法律に沿った行動が大切になります。後悔しないためにも、行動を起こす際には専門家である弁護士への相談を検討してください。
従業員や取引先への対応
会社が破産する際には2つの対応が必要になります。それが「従業員の解雇」と「債権者への報告」です。必要な対応が2つと聞くと、大きな手間がかからないと感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、従業員全員と全ての債権者が関わることなので、決して簡単なことではありません。現実的には、経営者が一人で対応することは難しいといえるでしょう。
この時、大切になるのが弁護士などの専門家に依頼することです。弁護士に破産手続きを依頼することで、経営者の負担は大きく軽減します。
「従業員の解雇」においては、解雇のタイミングや説明すべき事項、雇用保険の受け取り方法などのアドバイスを受けることが可能です。また、従業員からの問い合わせに対しても専門家の適切な回答を伝えることができます。これは、従業員の新しいスタートをサポートするうえでも、非常に重要です。
また「債権者への報告」は弁護士が行ってくれるうえに、問い合わせ窓口が代理人弁護士になる旨も通知されるので、経営者が対応する必要がなくなります。
弁護士が窓口になることで対応に迫られることがなくなるだけでなく、心理的な負担を軽減することも可能です。早めに専門家に相談することで、心が楽になるだけでなく適切な対応が分かることも少なくありません。少しでも早く新しい一歩を踏み出すためにも、早めの相談を心がけてください。
まとめ
経営者が会社の連帯保証をしている中小企業は少なくありません。このような場合、会社が破産すると経営者が債務履行の義務を負うことになります。そのため、会社の破産と同時に経営者も債務整理を行うケースは珍しくありません。
多くの方は債務整理と聞くと「自己破産」を思い浮かべるでしょう。本記事でも自己破産について解説してきました。しかし、債務整理には自己破産以外にも「任意整理」や「個人再生」という選択肢があります。ここで問題になるのが、どれを選べばいいのかということです。しかし、これは簡単に決められるものではありません。なぜなら、その後の人生にも大きな影響を与えることになるからです。
この時、重要になるのが専門家のアドバイスです。弁護士に依頼すると、状況に応じた適切な選択肢を提示してくれます。
経営者の中には、どうしようもなくなるまで一人で悩まれている方も少なくありません。しかし、早めに対策を講じておくこと非常に重要です。
現在、悩まれているのであれば無料相談を活用できる場合もあるので早めに専門家に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
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