個人再生と任意整理の違いは?選び方と違いについて解説します!
借金の返済が難しくなったとき、選択肢となるのが「債務整理」です。
中でも「任意整理」と「個人再生」は多くの人が検討する代表的な手続きですが、この2つには大きな違いがあります。
この記事では、それぞれの制度の特徴やメリット・デメリット、選び方のポイントまでをわかりやすく解説します。借金問題を解決するための、一歩を踏み出すための情報をお届けします。
目次
任意整理と個人再生とは?
借金の返済に困ったときには、債務整理を検討することができます。「任意整理」と「個人再生」は、どちらも代表的な借金問題を解決する方法です。この両者には手続きの内容や効果に大きな違いがあります。
任意整理
任意整理は、債権者と直接交渉して返済条件の見直しや将来にわたる利息のカットなどを行う方法です。
任意整理では、裁判所を通さずに交渉を行って、利息や遅延損害金のカットや返済期間の延長をするというものです。返済計画の見直しで支払いの総額を減らす交渉ができるだけでなく、毎月の支払い金額を減らす交渉もできます。
消費者金融やクレジットカード会社、銀行などと交渉し、今後の利息をゼロにしたうえで元本だけを分割で返済するような方法を提案します。元本そのものは減額されませんが、利息のカットに同意して貰えれば総支払額が減るため負担は大きく軽減されます。
任意整理は、弁護士・司法書士に依頼して交渉して貰うケースがほとんどです。債権者との交渉から手続きまで任せることができますし、中には代理人でなければ任意整理の交渉に応じないというケースもあります。
個人再生
個人再生は、裁判所を通じた手続きをして借金を大幅に減額してもらう制度です。
裁判所に再生計画案を提出し、裁判所と債権者の同意を得て、減額後の借金を3〜5年で返済するというものです。この場合、利息だけでなく元本を一定の割合で減らすことができます。
この制度の大きな魅力は、「住宅ローン特則」を利用することで、マイホームを手放さずに済む可能性があることです。ただし、個人再生の手続きをするためには収入などに条件があります。
自己破産
自己破産は、借金の返済義務を免除してもらう最終手段です。
裁判所を通して手続きを行って借金をゼロにします。これを免責といいます。
ただし、一定の資格制限がかかる職業もあり、官報への掲載や、保証人への影響などリスクも伴います。また、免責不可事由といった制限もありハードルが高くなることもあります。
そのため、自己破産を避けたい人が「個人再生」や「任意整理」を検討する傾向があります。
過払い金は債務整理ではない
ここで注意したいのが、過払い金の請求は債務整理と同時に行われるケースが多いものの、債務整理ではないという点です。
過払い金の請求は支払い過ぎていた利息を返してもらうための手続きです。債務が残っていなくても行われる手続きであり、債務整理ではありません。
任意整理と個人再生は違う手続き
債務整理は一括りに語られがちですが、実際には手続きの方法・関わる機関・返済の扱いなど、大きく異なる点があります。
任意整理
まず、任意整理の手続きについて特徴を見ていきましょう。
裁判所の手続きは不要
任意整理は、裁判所を介さず、債権者との話し合いで返済条件を調整するというものです。
交渉で行うものなので、手続きのハードルが比較的低く、書類も少なくて済みます。ただし、裁判所の手続きではないため強制力はなく「相手が合意してくれるかどうか」がポイントになります。
弁護士や司法書士に依頼するケースが多い
債権者との交渉力が結果を左右するため、法律の専門家に依頼する人がほとんどです。
弁護士・司法書士が代理人にして交渉することで、本人の精神的負担も大きく軽減されます。一件あたりの債務が140万円以下であれば、司法書士でも交渉ができます。
個人再生
個人再生は元本を減らしつつ、債務を整理するという方法です。
裁判所の手続きが必要
個人再生は、裁判所への申立てで行う債務整理です。法律の効果で借金を減らすことができます。
申立書、財産目録、債権者一覧表、家計収支表などの多くの書類が必要で、種類がいくつかあります。
自分でもできるが依頼するケースが多い
個人再生の手続きは自分でしても法律上は問題ありませんが、手続きが複雑で法律の知識が必要であるため、専門家に依頼するケースがほとんどです。
個人再生と任意整理の違い
両者の違いは、「手続きの方法」だけではありません。どちらも計画的に借金の返済をするための方法ですが、目的や制度設計、実際に得られる効果には明確な違いがあります。
負債の元本は?
任意整理では、借金の元本は減額されません。交渉の対象となるのは、将来発生する利息や遅延損害金であり、これらをカットしてもらうことで、実質的な負担を軽減する方法です。そのため、借金そのものは残るものの、今後支払う総額は減る可能性があります。
一方、個人再生では、借金の元本を5分の1から10分の1程度まで減額できるのが特徴です。これは、任意整理にはない大きなメリットのひとつです。
家を残せる可能性はあるのか
住宅を所有している人にとって重要になるのが「家を手放さず債務整理ができるか」という点です。任意整理は交渉で行うものであるため、任意整理の手続き自体がローンに干渉しないため、ローン返済を継続できる限りはマイホームを維持できる可能性が高いといえます。
これに対して個人再生には、「住宅ローン特則」という制度があります。住宅ローンは従来通り支払いながら、その他の借金だけを減額することができます。たとえば、消費者金融やカードローンの返済は大幅にカットしつつ、マイホームの支払いは継続できる仕組みです。この特則は個人再生でしか使えない制度です。一定の条件はありますが、自宅を手放すことなく借金の元本を減らすことができる有効な方法です。
住宅ローン特則は個人再生のみの制度
「住宅ローン特則」は、任意整理や自己破産にはない制度で、個人再生だけに認められている特別な救済措置です。家族の生活の基盤である自宅を維持したいという人にとって、大きなメリットとなります。
手続きのしやすさ
手続きのしやすさや完了までのスピードも任意整理と個人再生では大きな違いがあります。
任意整理は、裁判所を通さず、債権者と直接交渉するため、比較的簡単な書類で手続きが可能です。弁護士や司法書士に依頼すれば、開始から数ヶ月程度で交渉が成立することもあり、短期間で借金の整理が可能となるケースも少なくありません。
一方、個人再生は裁判所を通すため、必要な書類や手続きが煩雑であり、申立てから再生計画の認可までに時間がかかるのが一般的です。複雑な手続きとなるため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して行うケースが多くなります。
財産の処分についての違い
任意整理の大きな利点のひとつは、自分の財産を処分する必要がないという点です。あくまでも交渉で行うものなので、預金や車などの財産を持っていたとしても、それらを処分することなく手続きができます。
一方で、個人再生は原則として財産の処分はしませんが、保有している財産の価値と、最低弁済額(法律で定められた最低限返すべき金額)を比較して、返済額と同額程度の財産を残すことができます。つまり、保有している財産が多い人は、返済額も増える可能性があるということです。
強制力の違い
任意整理では、あくまでも債権者との合意によるものです。つまり、債権者が交渉に応じなかったり、和解に応じない場合は、手続きが成立しない可能性があるのです。そして、債権者には「必ず応じなければならない」ということはなく、断られるケースもあります。任意整理に非協力的な債権者がいたとしても、それは相手の権利として認められていますので、法律の効果や強制力はありません。
それに対して個人再生は、裁判所が再生計画を認可すれば、債権者が一部反対していたとしても手続きが実行されます。この「法的拘束力」がある点が、個人再生の大きな強みです。
ブラックリストについて
債務整理を検討する際に気になるのが「ブラックリストに載るかどうか」です。
この「ブラックリスト」とは、正式には信用情報機関における事故情報の登録のことで、返済遅延や債務整理などの情報が記録されている状態を意味しています。
債務整理をするとブラックリストの状態になる
任意整理・個人再生・自己破産のいずれを選んでも、債務整理をすれば信用情報機関へその情報が登録されます。
これにより、新たなローンやクレジットカードの審査が通らなくない状態「ブラックリスト」という状態が一定期間続きます。
ブラックリストの登録期間は、手続きの種類や信用情報機関によって異なります。一般的には任意整理で5年程度、個人再生や自己破産では5〜10年程度が目安とされています。
ローンやクレジットカードが一定期間使えなくなる
事故情報が記録されている間(=ブラックリストの状態)では、新規の借入やクレジットカードの契約は難しくなります。また、今持っているクレジットカードカードの更新が拒否されたり、解約される可能性もあります。
ただし、これはあくまで一時的なものです。一定期間が経過すれば、事故情報が削除されます。つまり、債務整理をしたからといって、一生ローンやカードが使えなくなるわけではありません。
個人再生と自己破産は官報にも掲載される
個人再生や自己破産など、裁判所を通して行う債務整理手続きをした場合は、手続きの終了後に情報が「官報」に掲載されます。
官報は公開されている情報であり、誰でも閲覧できるため周囲に知られる可能性はあります。ただし、官報をチェックしているという人は限られているため、官報に載る=絶対に知られるということではありません。
任意整理は裁判所の手続きではないため、官報への掲載はありません。
任意整理と個人再生のどちらが向いているのか
債務整理を検討するときには、自分の状況に合った方法を選ぶことが非常に重要です。
ここでは「任意整理が向いている人」と「個人再生が向いている人」の違いを解説します。
任意整理が向いている
任意整理が適しているのは、借金の元本は返済可能ではあるものの、利息や遅延損害金によって返済が困難になっているというケースです。
・借金の総額が比較的少ない
・安定した収入ががあり返済の見通しがある
・車や預金、自宅などを手放さず債務整理したい
・複数社からの借入があるが元本のみであれば返済可能
・周囲に知られずに解決したい
このような場合は、任意整理を検討できそうです。
個人再生が向いている
個人再生が向いているのは、借金の元本が大きく、任意整理では返済が難しいものの安定収入があり減額されれば返済できる人です。
また、住宅ローンを抱えていてマイホームを維持したいケースでは、住宅ローン特則を活用できる個人再生が有利です。
・借金の総額が5000万円以下
・任意整理では返済が難しい
・自己破産は避けたい
・住宅ローンがあり自宅を手放したくない
・借金の理由が自己破産の免責不可に該当している
上記の場合は、個人再生を検討しても良いでしょう。
任意整理・個人再生それぞれの保証人への影響
債務整理を考えるときには「保証人」への影響を考慮する必要があります。自分だけで完結すると思われがちですが、保証人がいる借金を整理する場合、その人にも返済義務が生じるケースがあります。
任意整理の場合
任意整理では、整理する債務を自分で選べるため、保証人がついている借金を対象から外すことで保証人支払い義務が移転しないように配慮できます。ただし、保証人がいる債務を整理対象にすると、債権者から保証人へ一括請求されるリスクがあります。
個人再生の場合
個人再生では、すべての借金が債務整理の対象となるため、保証人付きの債務も含まれます。本人の返済義務が減っても、保証人に請求される可能性があります。
債務整理は専門家に相談するのが第一歩
借金問題は、一人で悩み続けるほどに状況が悪化する可能性があるものです。複数の債務整理の方法には、それぞれメリットとデメリットがあるため、自分で選ぶより専門家に相談するほうがいいでしょう。
専門家のアドバイスで正確な情報と解決策を知ることが、再スタートへの近道になります。
自分ひとりで解決する難しさ
債務整理には、法律・裁判所の手続き・債権者との交渉など、専門的な知識が必要です。知識が不十分なまま自己判断で進めてしまうと、手続きがうまく進まなかったり、判断を誤ってしまうケースもあります。
プロの視点で最適な方法を選択する
弁護士や司法書士といった法律の知識を持つ専門家に相談することで、状況に応じた最善の選択肢を提案してもらえます。
また、無料相談をしている法律事務所も多いため、最初の一歩としてのハードルもそれほど高くありません。
まとめ
「任意整理」と「個人再生」は、どちらも借金問題を解決するための法的な手段です。
しかし、手続きの流れや効果、どちらの方法が向いているかには明確な違いがあります。
大切なのは、自分の借金額や弁済の可能性・収入の状況や・生活環境を踏まえたうえで、最適な方法を選ぶということです。
ローンなどの借金の返済が難しくなったときには、一人で悩まず、専門家に相談することで、解決の糸口が見えてくるはずです。
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