破産と財産分与の関係について解説!自己破産が財産分与に与える影響とは
財産分与離婚と自己破産はどちらも人生の中で大きな出来事となります。そして、自己破産と財産分与を行う時期が近い場合は両者の手続きでの法的な関係が問題になるケースは少なくありません。
「破産すると財産分与はどうなるのか」「離婚前と離婚後で結論は異なるのか」「養育費や婚姻費用の支払い義務まで免責されるのか」など、当事者にとっては大きな悩みとなります。
実際、財産分与と自己破産はどちらもお金や財産、支払いや請求権に関係するものですので、手続きとしては別でも全く無関係というものではありません。特に、不動産や預金、ローン、自宅の所有、慰謝料、養育費などが絡む事例ため複雑です。
この記事では、財産分与と破産の基本的な関係を確認したうえで、離婚前・離婚後・財産分与後といったタイミングでの、免責されない債権、否認や返還請求が問題になるケースまで、専門家の視点で解説します。
目次
自己破産と財産分与は別のもの
まず前提として、自己破産と財産分与の違いについて理解しましょう。自己破産と財産分与はどちらもお金に関係するものですが、制度の目的も対象も異なります。
そのため「破産したから当然に財産分与がなくなる」「離婚したから借金問題が解決する」という理解は原則として正確ではありません。まずは、それぞれが何を目的とした制度なのかを分けて考える必要があります。
自己破産とは
自己破産とは、債務の支払いが困難になった場合に裁判所に申し立てをして、財産や債務を整理して支払い義務をなくす免責を受けられる破産手続です。
自己破産をした場合は、必要な手続きをとって裁判所からの免責許可が認められれば、破産者は原則として借金の支払い義務を免れることになります。ただし、すべての債権が免責の対象になるわけではなく、税金や養育費や婚姻費用などの非免責債権もあります。
債務整理には、自己破産以外にも任意整理や個人再生がありますが、借金の支払い義務がなくなるのは自己破産のみです。
財産分与とは
財産分与とは、離婚をした夫婦の一方が、他方に対して財産の分与を請求できる制度です。
離婚をした場合、夫婦の共有財産については相手方に対して財産分与を請求できます。話し合いで決めることができますが、話し合いがまとまらない場合には家庭裁判所に申し立てをして調停や裁判で財産分与を行います。
財産分与とは、単純に「名義どおりに分ける」制度ではありません。婚姻中に夫婦が協力して形成した財産を清算するというものであって、離婚後の生活保障や慰謝料的な要素が問題になることもあります。
財産分与と自己破産のタイミング
財産分与と自己破産の関係は、どちらが前か後かで財産の取り扱いが異なります。
離婚前に破産するのか、離婚後で財産分与前に破産するのか、それとも財産分与の後に自己破産するのかによって、請求権の扱い、対象になる財産などが変わってきます。
ここでは「いつの時点でどの権利が発生していたか」「どの財産が手続の対象になるのか」「免責の対象なのか」が重要な判断ポイントとなります。
離婚前の自己破産
離婚前に一方配偶者が自己破産する場合、まず問題になるのは、その人が持っている財産は破産手続の対象になるという点です。
対象になるのは、預金、不動産、財産価値がある車、保険の解約返戻金などです。こうした財産は管理の対象となり得ます。
そして、ポイントになるのはこの段階では、まだ離婚が成立していないということです。つまり、まだ産分与請求権は発生していません。したがって「これから離婚する予定だから、その分は相手に渡すつもりだった」という事情があっても、財産が破産財団から外れるわけではないということです。
つまり、破産する人の名義になっている財産は一部を除いて処分されることになります。
もちろん、自己破産をしない配偶者の財産は自己破産の手続きには関係ありません。ですが、自己破産をする人の名義になっている財産で「これは財産分与で貰う約束していた」という財産であっても、名義人が自己破産すると自己破産の手続きの中で処分される可能性があるということです。
離婚後で財産分与前の権利者の自己破産
離婚後で財産分与前に自己破産するケースでは、財産分与請求権がすでに発生しているということになります。
まず、離婚が成立すると、民法の規定に基づいて、一方は他方に対して財産分与を請求できます。
財産分与義務者の側がこの時点で自己破産した場合、事態は複雑です。まず、破産手続が開始すると、債権者平等の原則のもとで個別の支払いが制約されます。そして、すでに破産財団に属する財産については自由に処分できなくなるためです。とくに、不動産やまとまった預金、自宅売却代金などがある場合は、破産管財人の管理下に置かれることがあります。
そのため、離婚後で財産分与前の状態で相手が破産しそうな場合は、早い段階で弁護士に相談するほうがいいでしょう。
財産分与の後に義務者が自己破産した場合
この場合、通常の離婚に伴う相当な財産分与であれば、直ちに問題になるとは限りません。
しかし、自己破産をする前に、配偶者へ不動産や預金をまとめて渡す、著しく高額な分与金を約束する、他の債権者に何も支払わないまま夫婦間だけで財産を移すといった事情があると、破産管財人から否認権を行使される可能性があります。
否認権とは、破産手続が開始される前の財産の移動などについてなかったことにできる権利です
したがって、財産分与の後に義務者が自己破産した場合には金額の妥当性などが問題になる可能性があるということです。
自己破産をしても養育費や婚姻費は免責にならない
自己破産をすると、借金問題がすべて解決すると思っている人も多くいます。ですが、支払いがすべてなくなってゼロからスタートできるというのは実は誤解です。
破産法では、一部の支払い義務を非免責債権として定めており、税金や、養育費、婚姻費用、扶養義務に基づく支払いは自己破産をしてもなくならない支払い義務です。ここにいつては、財産分与とは別に考えるポイントです。
この点は、離婚や別居をめぐる相談で非常に誤解が多い部分でもあります。自己破産をし義務者から「破産したからもう払わなくてよい」「免責されたから養育費も終わりだ」と説明されるケースがありますが、法的にはその理解は原則として誤りです。
ここでは、自己破産と非免責債権である養育費や婚姻について解説します。
非免責債権とは
非免責債権とは、自己破産をして裁判所の免責許可決定が確定しても支払い義務が残る債権のことです。
破産法253条1項で規定されていて、以下が該当します。
・租税等の請求権
・悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権
・人の生命、身体を害する不法行為に基づく一定の請求権
・夫婦間の協力、扶助義務
・婚姻費用分担義務
・子の監護に関する義務
・扶養義務
・これらに類する契約上の義務
このため、養育費、婚姻費用、扶養料に関する支払いは、自己破産をしても原則として免責されません。たとえば、養育費の未払いがある場合に自己破産をしても、支払い義務はのこっているのです。
なお、慰謝料については、すべてが自動で非免責債権になるわけではありません。慰謝料の原因がどのような不法行為に基づくのか、悪意性や故意・重大な過失が認められるのかによって扱いが分かれるため、個別の事情に応じた判断が必要となります。
財産分与と、養育費については別の取り扱いになることを知っておきましょう。
話し合いによって金額を下げるケースはある
養育費や婚姻費用が非免責債権であっても、自己破産をしているという時点で支払い能力がないと考えるのが普通です。ですので、常に従前どおりの金額ではなく話し合いが行われるケースはあります。
たとえば、自己破産に至るほど収入状況や生活再建の見通しが悪化している場合、従前の額のままでは現実的に支払えないことがあります。そのようなときは、話し合いが行われます。
財産分与義務者の自己破産で問題になるポイント
財産分与を支払う側、つまり財産分与義務者が自己破産する場合には、単に「お金がなくなって払えなくなった」というだけではありません。
財産分与の合意内容や支払いのタイミングによっては、他の債権者との関係で不公平が生じ、破産手続の中で否認や返還が問題になることがあります。
特に、破産申立ての直前に財産を配偶者へ移したケース、共有財産について偏った処分をしたケース、形式上は財産分与であっても実質的には財産隠しに近いケースは問題になることがあります。
財産分与の合意の否認
自己破産前に過大な財産分与が行われた場合は返還請求されるケースがあります。
これは、離婚に伴う財産分与という名目であっても、他の債権者との公平性の観点から否認されるケースがあるのです。
もっとも、すべての財産分与が否認されるわけではありません。婚姻中に形成した共有財産の範囲、分与額の相当性、離婚の経緯、別居時点、慰謝料との区別、支払い能力、他の債権者への影響などを総合して判断されます。
つまり、通常の清算として相当な財産分与であれば認められる余地がありますが、過大な財産移転であると判断されると、財産隠しや公平性の観点から「財産分与の合意があっても否認される」ケースがあるのです。
この点は、夫婦間の話し合いだけで決めてしまうと後から説明に困ることが多いため、できれば合意書を作成し、財産一覧や査定資料、不動産評価、預金残高、ローン残高、婚姻中の寄与割合などを残しておくべきです。証拠が残っていれば、後に「不相当」「過大」といわれた場合でも反論しやすくなります。
財産分与の権利者が自己破産する場合
一方で、財産分与を受ける側、つまり権利者が自己破産する場合にも注意点があります。
「これから受け取る予定の財産だから自由に守れる」「離婚でもらったお金だから破産手続と無関係」と考えるのは危険です。
破産した場合は、現在保有している資産だけでなく、回収可能な権利や受領済みの財産が対象になることがあるからです。
自己破産前の財産分与で得た資産は手続きの対象になる
自己破産前に財産分与で得た資産は、その人の財産として扱われます。
つまり、離婚後に受け取った預金、不動産持分、分与金、保険解約返戻金相当額などは、自己破産の申立て時点で保有していれば破産手続の対象となるということです。
そして、まだ、財産を受け取っていなくても、請求権として評価できる状態であれば、破産手続との関係で問題になる余地があります。とくに、合意があるがまだ支払われていない分与金がある、財産分与に関する合意書がある、調停や審判が成立しているといったケースは注意が必要です。仮に「まだもらっていないから対象外」と考えていても、法的にはそうではない場合があります。
自己破産後の財産分与であれば問題にならない
自己破産後に離婚し、その後に新たに財産分与が発生した場合は、自己破産後に発生した権利に基づく請求権であるため自己破産での財産の処分の対象にはなりません。
ポイントは、財産分与の対象となる財産が、実際には破産手続開始前から存在していたものなのかです。ただし、破産申立て前から離婚の話し合いが進んでいた、別居していた、財産移転の約束があったといった事情がある場合は問題になるケースもあります。
まとめ
破産と財産分与は、どちらも離婚や生活再建に深く関係する重要な制度ですが、法的には別のものです。
自己破産は借金や債務を整理するための手続であり、財産分与は離婚した夫婦の間で財産を清算・調整するための制度です。ただし、どちらもお金や財産に関する手続きであるため、タイミングによって財産の取り扱いが変わります。
特に重要なのは、離婚前の自己破産なのか、離婚後で財産分与前なのか、財産分与の後に自己破産したのかというタイミングです。
財産分与と破産については、離婚のタイミング、破産の手続き、養育費や慰謝料、不動産の名義、ローンの有無などが複雑に絡む事例となるため、一般論で判断すると危険です。法律の手続きの理解が難しい場合は、財産の一覧、負債の状況、別居や離婚の時期、合意内容、請求権の有無、支払いの流れを整理したうえで、早めに弁護士や法律事務所へ相談することがトラブルの拡大を防ぐ近道になります。
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