自己破産すると年金は受給できるの?債務整理と年金の関係について解説します
債務整理自己破産を検討する人にとって、年金を受給できるかどうかは非常に大きな関心事です。将来の生活がどうなるのかという不安があるのは当然でしょう。特に、生活の基盤となる公的年金・個人年金が自己破産で「差し押さえ」や「没収」の対象になる可能性があるかどうかは、破産手続きを進めるうえで重要な判断材料となります
また、すでに年金を受け取っている「年金受給者」が自己破産するというケースも存在します。こうした疑問を解決するためには、年金制度や差し押さえの仕組みを理解すること。そして、必要に応じて弁護士・司法書士など専門家のサポートを受けることが不可欠です。この記事では、破産と年金の関係、免責手続きについて、注意すべきリスクや税金の支払いについても解説します。
目次
自己破産しても受給できる年金と受け取れなくなる年金がある
年金と自己破産の関係は、年金の種類によって異なります。ここでは、自己破産をした場合に差し押さえの対象になる年金と対象外の年金について解説します。
自己破産とは?
自己破産とは、借金を返済できなくなった人が裁判所に申し立てを行い、免責(=返済義務の免除)を受けるという制度です。0からのスタートができるため債務整理の中でも最も根本的な解決方法です。任意整理や個人再生とは異なり、税金の支払いを除くすべての支払い義務がなくなるという大きなメリットがあります。
ただし、破産の手続きを行うと、持っている資産や銀行口座の預貯金、保険契約などが差差し押さえ・処分の対象となります。このとき、年金がどう扱われるかは「年金の種類」が重要なポイントになります。
差押禁止債権とは
自己破産をすると財産が差し押さえられるというのは多くの方がご存じでしょう。ですが、すべての財産がその対象ではありません。自己破産には「差押禁止債権」という法律上のルールがあります。
差押禁止債権とは、たとえ債務者が自己破産をしたとしても、債権者が差押することができない財産や権利のことです。
具体的には、次のようなものが代表例です。
・公的年金(国民年金・厚生年金・遺族年金・障害年金など)
・生活保護費
・一定額の給与・退職金
・児童手当 など
これらは、生活を維持するために不可欠な資金であることから、差し押さえの対象にならないのです。そのため、公的年金の受給権そのものが差押の対象になることはなく、自己破産しても受給資格や支給額には影響しません。
ただし、年金が振り込まれる銀行口座に他の預貯金が混在している場合は注意が必要です。年金部分が誤って差押対象になるケースもあるため、年金受取専用口座を設けるなどの対策が有効です。
自己破産しても受給できる年金
自己破産をしても、公的年金については生活を支える資金であるため差し押さえの対象になりません。
公的年金
自己破産で差し押さえの対象にならない公的年金は以下のものです。
・国民年金(国民年金基金)
・厚生年金(厚生年金基金)
・障害年金
・遺族年金
・企業年金
・公務員共済
これらは法律上、差し押さえが認められない財産に分類されるため、没収や処分の対象にはなりません。もちろん、自己破産をしたから年金の受給資格がなくなるということもありません。
ただし、年金が振り込まれる銀行口座に資産がある場合には注意が必要です。差し押さえの対象の財産と年金が混在していると年金部分も差押対象であると誤認されるケースがあるため、年金受取専用口座を設定しておくのが安全です。
自己破産すると受け取れなくなる年金
自己破産をすると強制解約となり受け取れなくなる年金もあります。それは、個人にかけている個人年金です。
個人年金は強制解約される
個人年金は自己破産をしたときに差し押さえの対象になります。自己破産をした時点で債権者への返済に充てられることになります。個人年金は国の年金できなく、保険会社に積み立てている財産であるため、預金などと同じ扱いになるのです。
強制解約は具体的には以下のような流れです。
・保険会社との契約内容を確認
・解約手続きと返戻金の算定
・破産管財人による差押・分配
将来的な受給を見込んで長年個人年金を積み立ててきた人にとっては自己破産は大きなデメリットになります。
年金を受け取っている人が自己破産した場合
現在すでに年金を受け取っている人が自己破産をした場合「年金を差押えられてしまうのではないか」「年金をもらえなくなって生活費がなくなるのではないか」と不安を抱く方は多くいます。
実際、自己破産の手続きでは預貯金や不動産などの財産が処分・差押の対象となるため、年金がどう扱われるのかを理解しておくことは非常に重要です。
ただし、すべての年金が同じ扱いになるわけではありません。公的年金と個人年金では取り扱いが大きく異なります。ここでは、受給中の人が自己破産した場合の取り扱いと注意点について詳しく解説します。
公的年金の場合は受給を継続できる
年金受給者が自己破産をしても、公的年金そのものが差し押さえられることは原則としてありません。もちろん、受給資格にも影響しません。
免責を受けたあとも年金の支給は継続され、そのままの生活を維持できます。
ただし、銀行口座に対して差押命令が発令されるケースでは注意が必要です。年金の受給口座と預金がひとつの銀行口座に集中している場合は公的年金が差し押さえられてしまう可能性もあります。
個人年金の場合は差押の対象になる
個人年金については受給中であっても差し押さえの対象となり、残存額と返戻金は原則として没収されることになります。これは個人年金は、民間の保険会社と契約して積み立ててきた「個人資産」であるため、公的年金のような差押禁止の保護が適用されないためです。
個人年金は強制解約されて、未払いの負債(カードローンや住宅ローン)の残債の支払いに充てられます。
将来年金を受け取る人が自己破産した場合
今はまだ年金を受給していない現役世代が自己破産をする場合「老後の年金がどうなるのか」「受給できなくなるのではないか」と不安に感じる人は少なくありません。
しかし、自己破産によって公的年金の受給資格や支給額が失われることはなく、年金制度上の権利は法律によってしっかりと保護されています。
ただし、個人年金や確定拠出年金などの民間の年金制度については、差押・解約・没収といった処分の対象になるため注意が必要です。ここでは、将来年金を受け取る立場で自己破産する際のポイントと注意点を詳しく見ていきます。
公的年金に関しては受給資格や金額に影響はない
今、まだ年金を受給していない現役世代が自己破産をしても、将来の公的年金の受給資格や支給額に影響はありません。破産によって年金加入記録が消えることもなく、予定どおり年金を受給できます。
公的年金は、国が運営する「社会保障制度」の一部であり、破産したとしてもその加入記録が消えることはありません。たとえ自己破産で免責を受けても、国民年金や厚生年金の受給資格は維持され、受給年齢に達すれば予定どおり支給されます。
また、公的年金は「差押禁止債権」として法的に保護されているため、債権者が年金の受給権を差押えることもできません。免責を受けることで借金がなくなっても、年金受給権は失われないのです。
ただし、年金保険料の滞納がある場合には注意が必要です。未納が長期化すると、将来の受給額が減額されたり、受給資格期間を満たさなくなるおそれがあります。
この場合は、以下のような制度を活用することで加入期間を維持することが可能です。
・免除制度:全額免除・一部免除
・納付猶予制度:所得要件を満たす人が対象
・学生納付特例制度:学生が利用可能
これらの制度を利用すれば、経済的に厳しい時期でも受給資格を維持し、将来の受給額への影響を最小限に抑えることができます。
個人年金は強制解約されるため受け取れなくなる
一方で、個人年金については自己破産手続きの中で強制解約となるケースが多く、将来の受取はできなくなります。
強制解約の返戻金は債権者に分配されるため、将来の生活設計が大きく変わる可能性もあります。こうしたリスクに対応するには、早めに専門家へ相談し、自己破産後の運用と合法的に残せる資産を確認しておくことが大切です。
自己破産は公的年金の保険料について
自己破産をした場合、多くの人が「年金保険料や税金も免除されるのではないか」と誤解しがちです。しかし、実際には税金や公的年金保険料、住民税などは自己破産によっても免責されません。破産手続きで借金がなくなっても、これらの支払い義務はそのまま残るため、注意が必要です。
特に、国民年金保険料や住民税の滞納がある場合は、破産後も督促・差押・強制徴収といった手続きが進む可能性があるため、事前の準備と対応がとても重要になります。
自己破産しても免除にならない
自己破産は借金を整理するための制度であり、税金や社会保険料などの支払いは免責の対象外です。したがって、自己破産をしても以下のような支払い義務は残ります。
・国民年金保険料
・厚生年金保険料(給与から天引きされる分も含む)
・住民税
・所得税
・国民健康保険料
滞納がある場合、破産手続きとは別に自治体や年金事務所による徴収が行われることになります。
滞納がある場合は差し押さえや強制徴収のリスクも
公的年金の保険料や住民税を滞納している場合、その途中で自己破産をしてもその分の支払い義務はなくなりません。そのため、滞納が続くと、市区町村や年金事務所が銀行口座や給与に対して差押を行うことがあります。
また、年金保険料の滞納は長期化すると年金の受給額そのものにも影響する可能性があるため、放置は非常に危険です。
そして、住民税や国民健康保険料についても、時効が成立していない限り強制徴収が可能であるため、預貯金の差押えが実行されるケースもあります。差押が発生すると生活費への影響が大きくなるため、自己破産の手続きに入る前に税金関係を整理し、支払計画を立てることが非常に重要です。
自己破産したあとに個人年金に再加入する場合
自己破産をしたあとで、個人年金に再加入して将来に備えることはできるのでしょうか。
保険会社の条件を満たしていれば再度加入できる
自己破産をした後に、生活を立て直すなかで再度、個人年金に加入することはできます。
ここについては、保険会社の条件を満たせば個人年金への再加入は可能です。ただし、信用情報の影響で加入審査が厳しくなるケースもあります。
また、確定拠出年金のような制度も含め、自分の資産運用方法を見直すことが求められます。老後の生活費をどう確保するか、専門家への電話相談・メール相談を活用すると安心です。
自己破産を検討するなら司法書士・弁護士法人へ相談を
自己破産は、年金だけでなく、銀行口座、担保、資産、税金、生活費などさまざまな面に影響します。公的年金については差し押さえられることがなく、将来の受給額に影響はありません。ですが、どの財産が差し押さえの対象になるのかについては、法律の知識がなければ判断が難しいものです。
そのため、自己破産を検討している人は、早い段階で司法書士法人や弁護士法人、法律事務所に相談し、個別の状況に応じたアドバイスを受けることが重要です。無料相談を行っている事務所も多く、早期対応によってリスクを大幅に減らせます。
まとめ
自己破産をしても、公的年金は差し押さえの対象にならず、自己破産の免責後も受給資格が維持されます。一方で、個人年金や確定拠出年金は個人の財産とみなされ、差押や没収、強制解約の対象になります。
また、税金や年金保険料は破産しても支払い義務が残るため、自己破産をしても支払い義務が残ります。自己破産では、銀行口座や資産の扱いが複雑であるため法律の知識がなければ正しい判断ができないケースもあるため、司法書士や弁護士法人への早めの依頼をおすすめします。
破産のリスクを最小限に抑え、老後の生活費や年金を守るためには、正確な情報と適切な対応が鍵となります。
その他のコラム
破産申立ての場合における自動車の取り扱い
個人破産債務整理破産申立てを行った場合、所有していた自動車はどのような扱いになるのでしょうか。 自動車の代金を信販会社が立て替えており、自動車登録の所有者が信販会社の名義である場合 自動車登録の所有者が信販会社になっているため、信販会社が自動車の引き上げを求めることが多いです。 そのため、破産申立てを行う場合、一般的には、信販会社に自動車を引き渡すことになります。 &n
離婚時における住宅ローンの問題点
債務整理夫婦連帯保証離婚夫婦が離婚する場合色々な問題が生じ得ますが、中でも住宅ローンは離婚後の問題としてよく挙げられます。 離婚時に住宅ローンはどう問題になるのかを以下で述べていきたいと思います。 ①夫婦共同名義の住宅ローン 夫婦の収入を合算することでより多くの金銭を借り入れるための方法として、住宅ローンを連帯債務やペアローンの形で組んでいる夫婦も多いかと思います
破産者数(令和2年度司法統計)
会社破産個人破産債務整理法人破産借金問題を解決する手段として、破産がありますが、実際にはどのくらいの人が破産を利用しているのでしょうか。 令和2年度の司法統計によると、破産者の総数は79,348にのぼります。 このうち、自然人が72,583人、法人・その他が6,765となっています。 したがって、破産する自然人・法人等のうち、自然人が約91.5%を占めていることになります。 また、破産の総数79,348の
050-5482-3573
メールでのご相談
メールでのご相談


050-5482-3573